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チャッピー    幸せは谷戸をわたる風にのって
                         立木洋子 / 著

 何食べてるの〜?
 家の周りの約半周はチャッピーが自由にしていた。台所の床に前足をかけて「ごはんまだ?」、今度はぬれ縁から居間をのぞいて「あ〜お菓子食べてる…。」出掛けに玄関に置いた林檎の包みを鼻でほどいていたこともあった。夕方、帰宅して炊事の前にちょっと腹ごしらえと思ったら何やら視線を感じる。ドアのわずかな隙間に鼻面があった。「わ〜、見てたのね。」驚くほどの執着心。当時は「この食いしん坊!」などと思っていたが、”食べることに一生懸命”は人間も含めて、生きて行く者にとって最も必要なことだと思う。どんな時もおろそかにしてはいけないことなのだ。後に、この驚くべき”食い意地”がチャッピーを大病から救うことになるのだから。
  サマーカット
 暑いからといって毛を刈っていいものか迷っていた。(賛否両論あるらしい)体格がよくなるにつれて三毛がたっぷりなびいて美しかったから、よけいに切ることがはばかられた。けれども暑さに喘いでいる様子を見ると気の毒で、見てくれはどうでもいいからさっぱりとさせてやりたくなった。蒸し暑い6月に一回目、7月、8月はさらに短く切る。犬は人目など気にしないからいいようなものの、いやに足長になった後姿なんかちょっと情けなかった。残暑が厳しくても9月には切らない。秋風が吹き初める頃には少しずつ毛皮のコートを厚くしていかなければならないから…。
 
 え、ボクのせい?
 ”お風呂”、”洗う…”なんてうっかり口に出したら逃げられてしまう。シャンプーの泡だらけのときも桶やシャワーでお湯をかけられているときも、タイルの壁にくっついてじっと我慢。自力脱水機(?)ブルブルは10回。これでやっと脱衣所出られる。バスタオルに突進。3枚使って拭いてもらう。壁や床やドア、手当たり次第体を押しつけてまたブルブル…。もっと嫌いな耳掃除で終わり。その後は扇風機のそばで乾かすはずが庭に逃げられ、乾いた地面でゴロゴロ…、とんでもない黄な粉犬になってしまったこともあった。壁紙、木の柱,襖の下から30センチほどはチャッピーの湯上がりの滴や背中の汚れ、ハアハアした息がしみ込んで、今も黒くかすれている。

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チャッピー
ー幸せは谷戸をわたる風にのってー

2004年10月10日 発行
著者・発行者/立木洋子

製作・印刷・製本 岡本出版株式会社

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