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チャッピー    幸せは谷戸をわたる風にのって
                         立木洋子 / 著


 もうひとつの出会い
 この年はもう一つの出会いがあった。ずっと前からお世話になっている鎌池ブナ林亭のYさんのお孫さんたちだ。東京に住んでいて、毎年夏休みのほとんどを小谷で過ごすという、かわいい小学生の姉妹。二人はチャッピーに話しかけたり、似顔絵に描いたり、花で作った飾りを耳につけたりして遊んでいた。以前ならじっとしていなかっただろうに、この頃のチャッピーはすっかり子ども好きになっていたから、何をされても嬉しそうだった。目も耳も鼻も衰えて、ずいぶん動きが鈍くなっても、翌年も、翌々年も歓迎してくれた。本当に幸せ者だ。昨夏も小谷で彼女たちに会ったが、チャッピーをなくした私たちがよほど寂しそうに見えたのか、交わす言葉も少なく、なんとなく遠慮がちだった。
 チャッピー最後の小谷は2002年、15歳だった。この数年前から宿予約の頃になると、長旅に耐えられるだろうかと心配だった。獣医さんにたずねると全然問題ないとのこと。「意地でも連れていってもらうんだよ、チャッピー!」などとおっしゃる。お風呂マットとクッションで居心地よくした車内では、ほとんど横になっていた。若い頃は、高速道路ではじっと伏せの姿勢、一般道に降りると外に向かって吠えたり「休憩、休憩!」と大騒ぎしていたのに…。その休憩場所の中綱湖畔へは夫が抱いて降りた。小谷では車で行けない所はバギーに乗せた。筋肉のなくなった体は柔らかく、ぐったりしていたけれど、耳はピンと立って目はまん丸、表情はやけに生き生きしていた。気持ちだけは、風を切って全力疾走していたのかもしれない。オーイ、あの山に登った犬はだれだっけ?
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大渚山山頂         雨飾山頂間近 笹平


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チャッピー
ー幸せは谷戸をわたる風にのってー

2004年10月10日 発行
著者・発行者/立木洋子

製作・印刷・製本 岡本出版株式会社

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