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チャッピー    幸せは谷戸をわたる風にのって
                         立木洋子 / 著

 爺じ犬と雪
 すっかり歳をとったチャッピーにも、シェルティーらしい特質はたくさん残っていた。ご先祖が寒いところにいたためか暑いのは苦手だけれど、寒いのは大好き。大雪の日は、いつもはしゃいでいた。若い頃のようにピョンピョンとはいかなくても、全身に雪を積もらせながらいつまでも歩き回っていた。雪かきをしているご近所さんの目の前で、バクバク雪を食べたり用をたしたりして、「わ〜、どこの犬かと思った。」、「元気だねぇ。」などと言われたこともあった。
 匍匐前進(ほふくぜんしん)
 車庫の奥に通風口があり、床下の涼しい風が来る。暑がりのチャッピーお気に入りの昼寝場所だった。車があってもかまわず這うようにして潜っていく。匍匐前進だ。同じように縁の下にも潜った。ここは地面なので、自分の体に合わせて楕円形に穴が掘ってあった。足腰が弱ってからも「ま〜だがんばってるの?」と呆れるくらい潜っていたが、15歳の中頃だったか、さすがに出来なくなった。それでも諦めきれないのか、縁の下や車の回りを恨めしそうにウロウロしていた。

 お見舞いは”ひまわり”
 わが家は坂道の途中にあるので、一歩外に出れば足の痛いチャッピーには辛いことが多かった。特に下りはグリッグリッと関節が回って、見ているほうも痛くなりそうだった。あんまりひどいときは、散歩も無理をせずほんの近間ですませるようにしていた。年老いても好奇心の強いチャッピーにしてみれば不満だったに違いないが…。ある日の午後、子どもたちが大勢やって来た。「お見舞いだよ!」とのこと。「元気になってね。」「はやく、あしなおってね。」、「おさんぽにきてね。」などの寄せ書きとひまわりの花束がチャッピーに贈られた。よちよち歩きの子から1,2年生の子、通りかかった6年生のお兄ちゃんたち(チャッピーのお気に入り)も加わっての優しいお見舞いに子犬のようにあどけなく笑っていた。しばらく姿を見せないチャッピーを心配してくださった、彼らのお母さんたちの気配りもあってのことと思うが、こんなにも通じ合うものがあるのだと犬一匹の身に余る幸せを目の当たりにしていた。この日は家に引っ込んでからもなんだかウキウキしているようだった。
 道が好き
 ずいぶん寒い日でも日向ぼっこはかかさなかった。コンクリートにながながと寝て、気持ちよさそうにしていた。体が弱ってからはクッションが少しずつ増えていった。筋力も落ち、傾いた体をリラックスさせるためには必要だったのだ。どこかへ行ってしまうはずのないチャッピーだったが昼寝中も細い紐でつないでいた。ヨロヨロと道の真ん中に出ては危ないと思ったから…。どうしてかわからないけれど道が好き。つながれていても紐をいっぱいに張って道に出て行く。轢かれそうな所で伏せをして、うたた寝していたこともあった。本当は好きな子が通るのを待っていたんでしょう?チャッピー!
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チャッピー
ー幸せは谷戸をわたる風にのってー

2004年10月10日 発行
著者・発行者/立木洋子

製作・印刷・製本 岡本出版株式会社

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