ギャラリ-Chappyに戻る

幸せは谷戸をわたる風にのって
立木洋子 / 著
| せめぎ合い 室内犬になったチャッピーには、犬用ベッドとフカフカの布団が与えられたのに、なぜだか夫の席をねらっていた。ちょっとトイレにでも立とうものなら素早く移動して、座布団の上で丸くなる。しかられてもなかなか戻ろうとせず、時々様子を伺いながら寝たふりをしている。結局、無理矢理どかされるのだが…。その時の、ひんねり恨みがましい態度が後を引くのだ。犬相手に「本当に嫌な犬だなあ。」と夫が言った。チャッピーのほうもきっと「このクソ親父。」などと言っていたに違いない。 |

| 遅かったじゃない! 長ーい”自分の時間” 不用心は承知で2階のベランダを開けっ放しにしていた。一日中室内で留守番をしているチャッピーが、外を見たり日向ぼっこできるように…。夕方、家の近くまで帰ってきた私たちを見つけると大急ぎで階段を駆け降り、ドアの向こうで激しく吠えた。「ただいま!」と中に入っても歯をむき出して怒っている。”ヒャウヒャウ”、後退りしてなでさせない。「遅かったじゃない、遅かったじゃない、何してたの〜?」としばらく大興奮が続き、水を飲んでようやく落ち着く、これが毎日。日がな一日ひたすら道の彼方に飼い主の姿を捜し求めているのかと思うと不憫だった。思えば家に来てからずーっと留守番の日々、これからだって…。そんなとき「大丈夫よ!あの子は自分の時間を楽しんでるわ。」とご近所のAさん。「私たちの知らない”自分の時間”があったんだねぇ、チャッピー!」と少し安心。した 甘え上手は慰め上手 散歩の途中、Sさんに会うと足(靴)の上にグルッと、とぐろを巻くように座った。チャッピー流の甘え方で、「好きだよ…。」と素知らぬ顔で伝えているのだ。相手が子どもでも同じ、好きな子に近づいてなでてもらうのが上手だった。以前、病気をしたときは、ずいぶんチャッピーに助けられた。寝転んでいると、気配もなくやって来ては、脇腹のあたりにくっついて丸くなった。上目づかいでそれとなく様子を伺っているのだ。気弱になった私を一生懸命に慰めていたつもりかもしれない。「ありがとう、甘ったれのチャッピー!」 次のページへ |

| チャッピー ー幸せは谷戸をわたる風にのってー 2004年10月10日 発行 著者・発行者/立木洋子 製作・印刷・製本 岡本出版株式会社 |
