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雨飾山
(あまかざりやま)
1963m
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雨飾山 湯峠より
| 深田久弥「日本百名山」から つづき 翌日、私たちは小谷から笹ヶ峰牧場へ越すため乙見山峠さしかかる途上、再び雨飾山に接した。立派な姿だった。フトンビシの岩壁に鎧われた山は、紅葉の氾濫の上に厳として立っていた。山は心をあとに残す方がいい、と言った人がある。一ぺんで登ってしまうよりも、幾度か登り損ねたあげく、ようやくその山頂を得た方がはるかに味わい深い。私にとって雨飾山がそれであった。あとで越後の人からの知らせによると、古い漁師の話では、頂上の石仏は、糸魚川地方で有名な羅漢上人という坊さんが、自身で石を刻み、それをこつこつと山へ運んだものだそうである。山にウラ・オモテがあるとすれば、雨飾山はやはり越後の方がオモテであろう。雨飾という珍しい名前は、どこから来たものか。小谷温泉へ行く途中で道連れになった婆さんは、アマカサンと呼んでいた。私はアマカサンと雨飾のつながりを考えてみたが、わからない。また、文政年間(1818〜1830年)に出た青生東渓の「国群全図」の越後国の地図では、雨節山となっている。これは雨飾の誤記か、あるいは雨節が正名であるか、やはりわからない。しかしそんな詮索はどうでもいい。雨飾山という個性的な名前で十分ではないか。 次のページへ |