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その後の生活

●傾斜                                                                          .
 真っ直ぐ建っていたと思われた我が家も、実は傾いていた。南側に傾斜していて、テーブルに置いたコップがツツツツーと
移動するのが面白かった。
傾斜の生活に慣れると、平らなところで「オットット!」と体が傾く経験もした。同じ造りで逆向き
に傾いている家に行くと、真っ直ぐには歩けないくらい体も脳も傾斜に馴染んでいた。大きく傾いた近所の家は、つっかえ棒
を取り付けたが、約半年傾斜の生活が続いた。
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●立て替え・引っ越し                                   .
 新潟県から建替え・移転の話があり、町内で合意してそろって移転することになった。隣に大規模な市営住宅があった。
ほとんど同じ造りで被害も同様だったが、市営住宅の町内は移転に反対者が多かったらしい。希望者のみの移転になった。
高校生の私には意味がよく理解出来なかった。何かと利害が絡んでいたらしい。その後十数年間、市営住宅のエリアは、引
っ越したところは空き地になり、居座りを続けた家は「壊れた家にいるのだから家賃は払わない」として町内で合意して不払い
運動を続けたらしい。そして土地の払い下げ運動を展開し、見事にやり遂げた。2軒分の土地を買う人もいて、現在では立派
な住宅街になっている。「な〜んだごね徳か」と話題になった。                                    .

    
 地震前の町内      家の南側S36年頃 愛犬コロ  引っ越したプレハブ住宅  南側平成8年撮影

●隣のイビキが                                      .
 新しい住宅は、プレハブの仮設住宅のような造りだった。我が家は「K16号」県営の16という意味だった。2階建てで4軒
繋がっていた。1階は6畳と台所、2階に3畳と6畳、何とお風呂が無かった。その後、町内で要望し、庭にお風呂場がつい
た。今までは、平屋で6畳2間に台所と風呂場、私の小さい勉強部屋が増築されていた。移転後の方がちょっと広くなった
勘定で、2階になった分だけ気分が良かった。私の部屋は3畳が与えられた。だが困ったことがあった。プレハブの為、音が
良く聞こえるのだ。隣のおじさんのイビキが聞こえるのだ。「ブリ!」とおならまで聞こえる。お互いに静かに生活する習慣が
身に付いたようだ。
震災の仮設住宅と思っていたら、大学を卒業し横浜に来るまで7年半を過ごすことになった。母は1992
年に亡くなるまで28年もここで生活したのだった。母の3回忌の時、この地を訪れて撮ったのが、右の写真である。入居者
も無く荒れ放題になっていた。近く取り壊し、高層住宅になるという話を聞いていた。前の家は昭和25年から昭和39年まで、
2歳から16歳までの14年間、成長期に暮らしただけに、夢に出てくる家はこっちの家だ。                   .

●コッペパンが!                                      .
 小学生の頃、給食のコッペパンが嫌いだった。硬くて、まずくてパンという食べ物が嫌だった。いまだにパンを食べたくない
というトラウマになっているのがあの給食のまずいコッペパンが原因だ。それで、先生に見つからないように隠して持ち帰り、
縁の下のコンクリートの穴から中に捨てていた。「あれから少なくとも3年以上経っている。コッペパンは腐って無くなってい
るだろう」と思っていた。家を取り壊した時、念のため見に行った。コンクリートの土台だけになった跡地の、「ここ」とねらいを
つけてそこを見ると、何と!コッペパンがそっくりそのまま山積みになっていた。カビもはえず、乾燥してカチカチになってそこ
にあった。
恐るべしコッペパン!日陰の湿った縁の下でもカビも生えぬパン。防腐剤か何かたっぷり入ったのが、まずい原因
だったのだろうと思った。しかしこのパンの山は家族にも発見され、追求されることとなった。大失敗だった。
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●馬術チーム解散                                                                    .
 新潟競馬場も大打撃を受け、厩舎も多くが壊れた。東港の方へ移転が決まった。馬術チームも新潟国体が終わると解散が
決まった。馬術への夢も地震によって、ほんのつかの間のはかない夢に終わった。9月から生物部に入ったのだった。
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